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眠りの大切さを知るコラム

夜型を朝型に戻す方法

 夏は、子どもにとって楽しみが一杯。長めの休日を楽しみにしている大人も多いでしょう。しかし、睡眠にとって長い休みは危険な時期なのです。特に、親の手が離れる中学一年生の夏休みは、子どもが夜型化しやすい危険な時期です。

 朝型、夜型という言葉を聞いたことのある人も多いでしょう。朝にテキパキと仕事や家事が簡単にできるのは朝型(ヒバリ型)の人。午前中はどうも苦手という人が夜型(フクロウ型)の人に多いのです。朝型の人は、早い時間から体温が上昇してきます。目覚まし時計にたよらないでも目覚められることも多く、朝食をしっかり取れて、朝方から午前中にかけて体調が良く仕事がはかどるタイプです。夜型は朝の体温の上昇が遅く、目覚めが悪く、朝は食欲がなく、お昼すぎから夜にかけて体調が良く仕事がはかどるタイプです。もちろん中間型もあります。

 子どもが小さい頃は朝型タイプが大多数で、思春期ころから徐々に夜型タイプが多くなり高齢者では朝型タイプが多くなるとされています。朝型・夜型は、生活スタイルの志向性ですが、体のリズムが関係していてクロノタイプと呼ばれています。このクロノタイプは遺伝的に決まっているとの説もありますが確定的ではありません。英国での質問票を用いた調査なので、どこまで参考になるか判りませんが、38~73歳の男女43万人以上を対象にした調査で、典型的な朝型(27%)、どちらかといえば朝型(35%)、どちらかといえば夜型(28%)、典型的な夜型(9%)の比率だと報告されています。どちらかといえば朝型、どちらかといえば夜型の人は、生活習慣を調整することで典型的な朝型の生活にすることは比較的容易にできます。一方で、典型的な夜型の人をむりに朝型にすると、体調に悪影響がでることもあり、油断をするとすぐに典型的な夜型に戻ってしまうので無理をしない方がよいとの意見もあります。

 思春期以降から30歳代前半までは、多くは夜型のクロノタイプが日本では多いと考えられています。イギリスとは少し異なるようですね。夜型のクロノタイプの子どもが、休み明けまで典型的な夜型の睡眠習慣を引きずってしまうと、睡眠のパターンが定着しやすいことも判明しています。大人も長めの休日で典型的な夜型になってしまうと、出勤が始まってしばらくは、起床時間を早めることが難しく、早く起きても社会的ジェットラグ(social jet-lag)の影響で、一日中体調が優れず仕事がはかどらないという人もでてきます。

 学校に行っている子どもの場合、朝の授業開始時刻が決まっていますので、典型的な夜型の子どもは、睡眠が不足ぎみで睡眠に問題を持つ子どもが多く、不機嫌で疲れやすく、家族と問題を起こしやすいことが、アメリカの睡眠財団の全国調査で判明しています。さらに、典型的な夜型の子どもは、登校日に睡眠が不足するので休日に遅くまで寝ていることが多く、学校の授業についていけず成績も悪化しやすく、遅刻しがちになり、遅刻の繰り返しがきっかけで不登校になってしまうケースも知られています。

 成人では、典型的な夜型の人では不眠愁訴が多く、疲労感が強く、ストレスを溜め込みやすく抑うつ傾向が強いことが報告されています。また、朝食を欠食しやすく、心臓病のリスクが上がることも報告されています。そのためか、夜型は朝型にくらべて健康感が悪く幸福感も低いという調査結果もあります。このようにみてくると、夜型には全くメリットはないように見られますね。ところが、夜型の方が仕事社会では昇進が早い傾向も知られています。夜型の人は、長時間労働や徹夜・時差ボケに強く、融通がきいて打たれ強く、自己愛が強く思索的で社会競争に打ち勝ちやすい性格ともいわれます。

 遅寝の習慣は、体のリズムを後退させてしまいます。子どもでは、睡眠への体のリズムの支配力が大人より強いのです。遅寝になってしまった子どもを、夏休み明けに学校の時間に間に合うように起こそうとしても、子どもの体のリズムの方は、まだ睡眠の真っ最中と思い込んでいます。体のリズムは、もっと眠っているようにと子どもの体に働きかけて眠らせようとします。むりやり目を開けても体が眠ってしまっているので、なかなか起き出すことは難しいのです。遅寝になった子どもが、夏休み明けにこのような状態がしばらく続くのは、体のリズムが高い自律性をもっていて、すぐには体の時刻の調整ができないからです。

 2時間以内の遅寝であれば、3日間で早起きにもどすことができます。1日目は30分程度就寝時刻を早めます。翌朝は、登校に間に合う起床時刻より30程度遅めに、無理矢理にでも起こします。起床直後に朝日を30分以上浴びさせます。起床直後に明るい光を浴びることで、体のリズムが少し前進します。朝食は、納豆や牛乳などメラトニンやセロトニンの元となるトリプトファンとビタミンB6を多く含む食事をとらせます。確定した事実ではありませんが、朝に外光を浴びトリプトファンとビタミンB6を十分に取っている子どもは、早寝で機嫌の良い子どもが多いと報告されています。できれば、しっかりと噛んで食べる朝食の方が、目が覚めやすいことも知られています。それでもなかなか目覚めないようであれば、熱めのシャワーを浴びさせて交感神経を刺激するのも一方法です。睡眠不足で日中に眠そうであれば、午後0時~3時の間に60~90分のお昼寝をさせます。2日目は、就寝時刻をさらに30分程度早めて起床時刻は学校に間に合う時刻に起こします。朝の手続きは1日目と同じようにします。この日は昼寝をさせてはいけません。特に夕寝は、就寝時刻を遅らせる原因となるので危険です。このようにすれば、最後の3日目は、1時間程度であれば早く就寝させることも可能です。2時間以上遅寝になっていれば、準備期間をより長くとり1日目を何日か繰り返せばよいのです。手順は同じです。一日だけでは遅寝を早寝に変えることは困難です。しかし、夏休みの宿題が終わっていないなどの事情で、十分な準備期間をとることができない場合もあるでしょう。少しきついですが、朝の手続きだけを取り入れて、睡眠不足による昼間の眠気はお昼休みの15分以内の短時間仮眠(パワーナップ)で乗り切り、夏休み明けから就寝時刻を30分ずつ早めていくほかはないでしょう。この方法は、お盆休みに夜型になってしまった大人の休み明けの応急措置としても使えます。

(提供:快眠コンソーシアム)